nine hand red

誰かがはじめなければ、終わることもなかった物語。
そしてこれは一つの終わり。そしてこれは全ての終わり。

nine hand red

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杉並区の一角にあるアパートに、彼女は住んでいる。
帰宅し、明かりをつける。かねてから身に染みついている蒐集癖は収まるところを知らない。以前は、雑多な店の店主であり、気ままな妖怪退治として生きていた。今では一匹のフリーターにすぎず、自分は片付けられない女、という一言で片付けられてしまう。
電子レンジで温めたコンビニ弁当が、おそらく今日ののこり3個のぬくもりの一つ。あとはシャワーを浴びて、寝る。それだけの日々だ。
PCを式と呼んだ頃もあった。そんな頃も、確かにあったのだ。全ては過去のものとなり、すぐに霧散していく。

飯を一日三回食べる。今ではできるようになった程度で、捨虫を会得した彼女は食べる必要はなかった。ただ、周りに合わせて食べる。食べる。食べる行為そのものすら、必要なコミュニケーション。
やたらと味の濃い広東風炒飯をかきこみ、彼女は眠りにつく。
頭の中にかすみがかかったようにぼやける。白く、またどす黒く、ただ思考を支配していく。吸い込まれていく。ああ、今日もまたあの夢を見るのか。

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博麗家が断絶したのは、つい2年前の出来事である。
つまるところ、博麗霊夢の死。それに伴われて、博麗大結界の霧散。多くの幻想の消失。その中で、自分は確かに消えずにこちら側の世界にやってきた。ただ、目の前で紅茶を飲んでいたパチュリー・ノーレッジの行方は分からない。紅魔館そのものの行方も知れぬまま。
東風谷早苗と出くわしたのは、3週間後のことであった。日本のあちらこちらの神殿をめぐって、守谷諏訪子や八坂神奈子の行方を探していたようだが、彼女自身も現人神としての信仰がほぼ皆無であることに起因してか、ほとんどの能力を失い、人間と変わらぬ日々を過ごしていた。


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いちほ。博麗霊夢は他殺である展開を描きたいのでプロットしっかり書きたいね。